紅茶文庫

ややななめの視点から、やさしい語り口で大学生が語ります。本、音楽、(大学)生活、生き方について。

彼女が留学することになった

僕、科目「政治・経済」が好きなんです。需要供給曲線を見るだけで興奮するくらい好きで、

経済学科の女子にひかれたことがあるんですけど、

 

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▲興奮する

 

そんな僕が、最近なぜか世界史の勉強をやってるんですよね。

 
んで、世界史もまた面白い。もしかしたら政経より好きになるんじゃないかと思ったりもして。
 
僕は、バイトで受験生の質問対応をする仕事をしているんですよ。実は、政経っていうのはマイナー科目で、本当にたまーーに対応する感じで。英語とか古典とかはバンバンくるのに。古典とか正直もう忘れたんでやめて欲しいんですが、
政経に至っては、2週間くらい質問がこない時期だってあるわけです。
 
今日までまさにその時期で、全然質問がこなかった。それでね、今日久々の政経の対応をして、確信したわけです。
 
「やっぱ俺、政経のことが忘れられないな」って。
 
この気持ちは、彼女が留学している男の気持ちと一緒です。
 
 
 
これが国際化か。
 
彼女が留学することになった。頭の悪い俺にはよくわからない理由を並べて、彼女は日本を去っていった。
きっと、一生懸命勉強して、外国でいい経験をして、充実した時を過ごすんだろうな、と喜ばしい出来事にため息をつく矛盾に情けなさを感じる。
 
一方、残された俺には大してやることもなく、「俺もおっかけて留学しようかな〜」なんて思うのは思うだけで、自分にはそんな精神力も語学力も行動力もない。
同じ三回生のはずなのに、どうしてこうも違うんだろう。
そうやって自分と彼女の釣り合わなさを再確認している。
 
発つ時、彼女は言った。
「寂しくなったら別の彼女作ってもいいからね」
 
圧倒的サバサバ感。留学女子にありがちだな。たしかにそうだよな……留学する女子と貧乳はサバサバしてるって相場で決まってるんだ。彼女どっちにも属してるしな、でも割とそんなところが好きだったんだけどな、まぁたまに胸はもう少し欲しくなるけど、と回想するのもそこそこに、自分の目の前に突き出された言葉に締め付けられる。俺、必要ないのかな、って。
 
でもそんなことを思ったのももう4ヶ月前の話。男ってやつはやっぱりバカなものだ。バイト先の、クラスで5番目くらいに可愛くて、少しアホの子だけど彼女より胸が大きくて愛想のいい子に惹かれちゃっている自分がいる。なお、なんで少しアホな子に限って胸が大きいんだろう、という謎に答えは出ていない。
 
バイトが楽しくて楽しくて、シフト無理に入れて12連勤とかしたりして、でもその子はうち1日しかシフト入れてなかったりして、まさに砂漠を彷徨うようなバイトヘル、でもその例の1日であの子の笑顔が見れたときには疲れもふっとぶぜ、ってな感じでなんだかんだ楽しくやっている。
 
でも、ふと、モヤモヤを感じていたりして。理由は分かっているんだけど、
 
「彼女作っていいんだよ」
 
という言葉を免罪符にして、脳内お花畑を満喫している。別にバイト先の子となんかあったわけではなく、今までで最も密なコミュニケーションといえば偶然クローズ作業を一緒にやって、その後の帰り道、途中の道で別れた彼女が笑顔で手を振ってくれたというエピソードなんだけれども。
 
 
ある日、久しぶりに男友達で集まることになって、たまり場になっているいつもの友達の家へ。当然、高校の時の卒アルを眺めることに。4年前の風景をおじさんのように懐かしい、懐かしいと嘆きながら見るイベントが始まったわけだ。
 
そして、そのイベントにつきものなのが、留学した、同じクラスだった彼女の写真。当時は付き合ってたって誰にも言ってなかったけど、今となってはバレバレだから精一杯からかわれるわけで。偶然同じ写真に収まっているショットが1枚だけあって、それが残っていることが当時は何より嬉しかったなって思っていた。
 
そう、思っていただけなんだ。この写真をみても、少し体温が上がり、顔をそむけたくなるんだけど、でもずっと見ていたいようなあの感覚が戻ってこない。
この写真で、からかいの総攻撃を迎えるわけだが、自分の頭の中にはモヤモヤしか残らない。
 
「このやろー」なんて口では言うけど、そんなことを言う資格がないのは、自分が一番よく分かっている。
 
こんなモヤモヤ、酒を飲んで忘れようと、その後向かったの居酒屋ではいつもよりお酒を多めに飲んだ。就活の話、女の話。真面目だかゲスだかわかんない話をした後、また友達の家に戻りしこたま寝た。そして次の日の夕方に帰ってきた。
 
よせばいいのに、家に帰ると寂しくて、帰ってからアルバムをもう一回引っ張り出してしまった。
 
手が止まってしまったのは集合写真でもあのページでもなく、最初の寄せ書きだった。誰かに見られるのが恥ずかしいからと、お互い学校では交換しなかったが、卒業してから僕の家に遊びに来る時にお互い書いたものが、少し薄くなりながらも残っていた。短い言葉だった。
 
「卒業おめでとう、これからもよろしく。」
 
小さいけど綺麗な字。黒色のボールペンで書かれたなんともない記述が、なぜか他のどんな派手な落書きより目に留まるのだ。それを見た瞬間、バイト先の子の明るい話し方も、くしゃっとした笑顔も、すごくちょうどいいサイズの胸でさえ、確かに、確かに好ましいけどそうじゃないんだよな、と思う。バイト先の子の全てが、留学した彼女の魅力を説明するための踏み台に成り下がる。
 
無愛想で、無表情で、料理が下手で、でも毎年バレンタインには得体の知れないお菓子を作ってくれる彼女が、やっぱり僕にはしっくりくる。
 
そうだ。今日は彼女に電話をかけてみよう。さりげなく好意が伝わってくれればそれでいいんだ。
 
国際電話とかよくわからないが、頑張ってかけてみよう。
 
 
あとは連絡先がわかればな。
 
 
 
 
僕の政経に対する気持ちがよくわかっていただけたかなと思います。
バイト先の女の子が彼女の魅力を相対化して表現する手段にすぎなくなる箇所は、
世界史の面白さがかえって政経の面白さを際立たせる構図の表現として
これ以上ないわかりやすさだっただと思います。
 
ターニングポイントの寄せ書きはもちろん需要供給曲線を表していますね。
 
 
でもこれだと僕は政経と結ばれません。それはどうかなと。
 
実際は、僕はいつでも政治経済の参考書を抱いて寝れるし、需要供給曲線をみても相変わらず興奮しています。もうアツアツです。
 
世界史とたまに遊ぶことはありますが、本命として真剣にお付き合いさせていただいています。
 
 
そしてなにより、政治経済は貧乳だったんですね。そこも政経らしくていいと思います。